2014年1月11日

【ArtFM 佐川美術館(滋賀県守山市)】

滋賀県守山市の佐川美術館へ行った。

水面に浮かぶ巨大な屋根、
魅惑の奥行きが溢れる当館、
現代建築にも古く正倉院にも見える。

主な所蔵は十五代樂吉左衞門、平山郁夫、佐藤忠良で、
余裕の館内で贅沢に鑑賞できる。

特に新館に並ぶ楽茶碗には、
抽象に見る世界や伝統の面影など、様々な景色が見えた。

/スグル
 今回の1枚目は佐賀美術館の建屋です。現代的なデザインにも見えますし、正倉院を模したデザインにも見えます。無駄を排したシンプルなデザインと大きな大きな屋根、そして周囲を囲う池が特徴です。

 この通り、周りは池です。池の中に建屋が浮かぶ構造となっています。おそらくは、敷地全体が日本庭園で、橋で渡る建屋が蓬莱島を見立てているのでしょう。蓬莱島の正倉院。双方共に私の妄想ですが、お宝の香りがしてきました。
 ちなみに、右奥に見える建屋は茶室です。その地下(水面下)に新館・樂吉左衛門館があります。

 建屋の前にシンプルな橋が見えます。やはり、蓬莱島ですよね?違います?



 大きく長い建屋のため、”魅惑の奥行き”にあふれています。当館を眺めるに楽しいポイントの1つです。

 この奥に入り口があります。

 入口を入ってすぐのエントランスホールです。ご覧のとおり、無駄がないというか何もありません。
 右に見えるのは展示室入口です。奥は幾つもの展示室に分かれています。展示されている作品は平山郁夫(ひらやまいくお)・佐藤忠良(さとうちゅうりょう)・十五代樂吉左衛門(らくきちざえもん)で、それぞれ多数です。
 佐川美術館の建屋全体に言えることなのですが、次の展示室への入口は比較的小型です。なので、入口をくぐってはじめて視界が開けます。おそらくは、展示室それぞれが次の展示室の前室の役割を担っているのだと思います。

 平山郁夫館と佐藤忠良館の間です。ここにも”魅惑の奥行き”があります。

 画面中央ちょっと左、池に作品が立っています。佐藤忠良のブロンズ像「冬の像」です。他に2点の佐藤忠良の野外彫刻がありました。

 佐藤忠良「帽子・立像」です。この写真は仙台の宮城県美術館の所蔵品を撮影したものですが、当館にも所蔵があります。
 佐藤忠良は近代日本を代表する彫刻家であり、例を挙げるときりがないほど幅広くの美術館で作品を拝見できますが、専門の大きな展示室を持つ館というと、あまり例がありません。私がパッと思いつくのは、当館と「佐藤忠良記念館」を持つ宮城県美術館(佐藤忠良は宮城出身)くらいです。

 当館の所蔵ではありませんが、佐藤忠良「演技生」です。新潟県上越市の高田公園(高田城)で撮影しました。

 平山郁夫「楼蘭の月」です(※当画像はネットより拝借)。「平山郁夫館」に展示されていた作品「楼蘭遺跡三題(ろうらん)」の1つで、「桜蘭の朝」「桜蘭の夕」と共に並んでいました。
 この3作品を見た際に印象に残ったのはその色です。それぞれ、「桜蘭の月→青」「桜蘭の朝→黄」「桜蘭の夕→赤」を主な色としています。これは、言い換えると「青→シアン」「黄→イエロー」「赤→マゼンダ」、すなわち「色の三原色」です。「そうか、一日は色の三原色で出来ていたのか」と気付かされました。

 「佐藤忠良館」「平山郁夫館」をまわり、次に向かった先は樂吉左衛門館(新館)です。

 右上に見えるのが茶室で、その水面下に樂吉左衛門館はあります。

 樂吉左衛門館のエントランスホールです。壁に光が降り注いでいます。まるで瀧のようです。なんだか水の音が響くようでした。
 余談ですが、光の滝といえば少々前に紹介した岩手県立美術館でしょう。規模の大小はありますが、同じ趣きがありました。



 十五代 樂吉左衛門(らくきちざえもん)「焼貫黒樂茶碗 銘 氣昏雨已過 突兀山復出」です(※当画像はネットより拝借)。
 曜変天目稲葉などの中世の名品を除いた中で、私が初めて心底好きになった品が、東京の智美術館(ともびじゅつかん)で拝見した楽家十五代目 樂吉左衛門さんの作品でした。この写真の作品はその初恋の思い出に近いものです。抽象的な景色とヘラの荒さがたまりません。現代の抽象画のようでありながら、ラスコーの壁画のようでもあります。人間の本質は原始時代から現代に至るまで変わっていないのかもしれませんね。

 樂吉左衛門「焼貫黒樂茶碗 銘 海市」(※当画像はネットより拝借)。
 こちらも15代の作品です。「樂吉左衛門館」という名称ですが、15代の作品のみが展示されています。もしかしたら、楽家14代までの作品が並ぶ機会もあるのかもしれません。
 楽家といえば、初代長次郎(千利休に見出された方)より代々続く家系で、お茶の世界で最も有名な陶芸一族です。それぞれ現役時代に「吉左衛門(きちざえもん)」を名乗ります。茶道に足を踏み入れた人にとって、楽家の茶碗は憧れ中のあこがれです。私も 限りなく欲しい!と思っています。
 ちなみに、”楽茶碗”は世に無数にあります。その名は楽家に由来するのですが、楽家が作ったものとなると極少数です。私も”楽茶碗”なら所有しています。ただ、濃茶は未経験なので未使用です。遠くない未来に使用し、そして育てていきたいと思っています。

 さて、こちらは樂吉左衛門館のお手洗いへの通路です。これまた魅惑の奥行きを感じます。

 お手洗いの洗面台です。か、か、かっこええ・・

 意識しているのかしていないのか、壁がなんだか15代樂吉左衛門風でした。

 さて、館の近辺のお話しです。琵琶湖岸に位置する当館の近辺には、この通り、畑が広がっています。山や空もいい感じです。
 実は、あの「超有名」ショッピングモール、ピエリ守山すぐそばに位置します。ですが、残念ながら写真はありません。行っておけばよかったと後悔しています。

 私の訪問は2013年5月。こんな季節でした。大変に心地よかったです。

【佐川美術館】
〒524-0102
・滋賀県守山市水保町北川2891 【map】
・TEL:077-585-7800
【開館時間】
・9:30~17:00(最終入館は16:30まで)
【休館日】
・毎週月曜日(祝日に当たる場合はその翌日)
・年末年始
※その他年間予定休館日はイベントカレンダーを要確認
【入館料(常設展)】
・1000円(一般)
・600円(大学生)
【アクセス】
・JR琵琶湖線 守山駅下車 近江鉄道バスまたはタクシーにて約30分
・JR湖西線 堅田駅下車 江若交通バスまたはタクシーにて約15分

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