2018年10月7日

【山種美術館「企画展 日本画の挑戦者たち -大観・春草・古径・御舟-」(東京 広尾)】

10月です。紅葉には早くとも、文化の秋は始まっています。さぁ美術館へ出かけましょう。今回は東京広尾山種美術館より、日本画と和菓子を堪能する展覧会をご紹介します。





展覧会名は、
《企画展 日本画の挑戦者たち -大観・春草・古径・御舟-》
2018年9月15日から11月11日まで開催されている、近代日本画の展覧会です。
※今回も内覧会での取材であり、撮影の許可を頂き掲載しています。
※所蔵について記述のない作品は全て山種美術館 蔵です。

さて、今回の主題である「日本美術院」については後に触れるとして、まずは特に魅了された作品を紹介します。

狩野芳崖(かのうほうがい)
「芙蓉白鷺(ふようはくろ)」明治5年頃 44歳頃作

狩野と聞くと、戦国?江戸?と思う方も多いでしょうが、芳崖は幕末から明治にかけての絵師です。ご本人の写真にも、ね、マゲがないでしょ。

絵の表現も江戸時代の一般的なイメージとは違い、南蘋派(なんぴんは)伊藤若冲(じゃくちゅう)、秋田蘭画に見られるような写実的な立体感があります。江戸の技術の総決算と言えるかもしれません。

狩野芳崖「芙蓉白鷺」(部分)

是非にこのキレのいい輪郭線を見て下さい。一本一本にベタボレします。遠くからも近くからも眺めて下さい。

小林古径(こけい)「猫」昭和21年 63歳作

鳥に続き猫の紹介です。食うか食われるか・・若干落ち着きませんが、まぁいいとしましょう。このニャン子、展示室の入り口にちょこんと座っています。私を迎えてくれているようです。

見どころ紹介を頂いた、明治学院大学教授の山下裕二先生によると、メトロポリタンミュージアムの展示品に由来するのではないかとのこと。


なるほど。確かに。ちなみにこの写真は、2004年12月にニューヨークへ行った際、メトロポリタン美術館の「エジプトのアート」コーナーで撮ったものです。

※余談ながら、この古代の彫刻は、ミュージカル好きだった私が是非会いたいと思っていた品でした。なぜならば、ミュージカル「アイーダ」の中でもこのデザインが使われているからです。もしアイーダを観劇なさったら、劇中のファッションショーに注目して下さい。モデルが着用する大きな帽子にこの猫が乗っかっています。今回の古径の作品といい、幅広く影響を与えるニャン子ですね。

速水御舟(はやみぎょしゅう)《昆虫二題》のうち
「粧蛾舞戯(しょうがぶぎ)」大正15年 32歳作

右の作品:速水御舟《昆虫二題》のうち
「葉蔭魔手(よういんましゅ)」大正15年 32歳作

山種美術館の至宝《 速水御舟「炎舞」》。その翌年に制作された姉妹作品が、この《昆虫二題》です。(※今回の展覧会では、当作品が撮影可能。)

それぞれ虫が描かれているわけですが、生きるもの、命を奪うもの、そして光、闇で構成されており、だんだんと曼荼羅のような仏画に見えてきます。手を合わせたくなる作品です。

※ちなみに余談ながら、理系の目で見ると《昆虫二題》という題名には間違いがある可能性があります。「葉蔭魔手」に描かれているクモは昆虫ではないからです。昆虫とは単純に言えば6本脚の節足動物なので、8本脚のクモは昆虫に入りません。正しく言うならば《節足動物二題》か《虫二題》ですね。まぁ、こんな無粋なこと、アートを前にして同伴の方に言わないで下さい。


横山大観「燕山の巻(えんざんのまき)」明治43年 42歳作

横山大観「不二霊峯(ふじれいほう)」昭和22年頃 79歳頃作

横山大観が登場したところで、「日本美術院」について触れるとします。

日本美術院は、日本美術界 中興の祖「岡倉天心(おかくらてんしん)」よって明治31年に設立された美術家の団体です。そのメンバーには、横山大観, 菱田春草, 下村観山をはじめ、小林古径, 速水御舟, 前田青邨などなど、数多くの歴史的巨匠が名を連ねています。近代日本画を語るに主となる団体です。今年創立120年を迎えることを記念し、今回の展覧会「日本画の挑戦者たち」は企画されました。

ちなみに、逸品揃いのこの展覧会、その展示品の全ては山種美術館の所蔵です。1館で近代日本美術史を語ることができるとは、本当に凄いことですね。

さて、魅了された作品の紹介に戻るとしましょう。

小茂田青樹(おもだせいじゅ)「春庭(しゅんてい)」
大正7年 27歳作

岩橋英遠(いわはしえいえん)「暎(えい)」昭和52年 74歳作

写真だなぁと感じる2作品です。その場に立っているような感覚を得ます。風や薫りまで伝わってきそうです。

富取風堂(とみとりふうどう)「もみぢづくし」昭和9年 42歳作

小林古径「清姫(きよひめ)」(全8点中の1点) 昭和5年 47歳作

下村観山(かんざん)「朧月(おぼろづき)」大正3年頃 41歳頃作

なんとなく京都な3作品です。そうだ!京都へ行こう!と言いたいところですが、最近は以前にも増して人が多いんですよね。こんな雅は美術館で味わったほうが良さそうです。

森田曠平(もりたこうへい)
「洛北仲秋(らくほくちゅうしゅう)」昭和40年 49歳作

右の作品:小山確(おやまかたし)
「天草(洗礼)」昭和47年 38歳作

壁画のような、レリーフのような2作品。重厚な空気が漂います。特に「天草」の、光と闇、心の笑顔と無表情、救済と重い運命、といった強烈なコントラストがたまりません。

西田俊英(にしだしゅんえい)「華鬘(けまん)」昭和58年 29歳作

活けた花ですかね。その点は洋画風ですが、花瓶の鳥と合わせると、日本の伝統的な花鳥図となります。裏読みし過ぎ? 個人的には、大好きなスチームパンクな雰囲気を持つところがお気に入りです。絵画なのに金属っぽく、現代なのにレトロっぽい。いいですね。

右の作品:宮廽正明(みやさこまさあき)
「水花火(螺(ら))」平成24年 61歳作

透き通る色彩に加え、大胆な構図に心惹かれます。感じるのは、瞳の輝きと若さです。61歳作には驚きました。

まだまだ作品はありますが、続きは美術館で味わって下さい。

では、山種美術館名物の「展覧会スイーツ」をご紹介しましょう。青山の老舗菓匠「菊屋」に特別にオーダーした和菓子で、それぞれ展示作品を模しています。

「敦盛(あつもり)」

平家物語「敦盛の最期」の敦盛です。有名な舞「敦盛(人間五十年・・)」を舞う織田信長を描いた、安田靫彦(やすだゆきひこ)「出陣の舞」を模しています。

「秋のおとずれ」

イメージは、富取風堂(とみとりふうどう)の「もみぢづくし」です。

「小夜」

小林古径「清姫」のうち「寝所」を模した菓子です。なんともかわええ。食べるのが惜しくなりそうです。

以上、 山種美術館の展覧会
《日本画の挑戦者たち》
のご紹介でした。

《企画展 日本画の挑戦者たち -大観・春草・古径・御舟-》
 【会期・開館時間】
・2018年9月15日(土)~11月11日(日)
 会期中、一部展示替えあり
・10:00~17:00(入館は16:30まで)
【休館日】
・月曜日(但し、9/17(月),9月24日(月),10月8日(月)は開館、
 9/18(火),9月25日(火),10月9日(火)は休館)
【入館料】
・一般1000円・大高生800円・中学生以下無料

【山種美術館(やまたねびじゅつかん)】
〒150-0012
・東京都渋谷区広尾3-12-36 【map】
・TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
【開館時間】
・10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
※特別展の開館時間は変更になることもあります
【休館日】
・毎週月曜日(祝日は開館、翌日火曜日は休館)
・展示替え期間
・年末年始
【割引券】
ホームページ割引券
【アクセス】
・JR恵比寿駅西口より徒歩10分 【アクセスmap】
・東京メトロ日比谷線恵比寿駅 2番出口より徒歩約10分

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