2018年12月14日

【山種美術館「特別展 皇室ゆかりの美術 -宮殿を彩った日本画-」(東京 広尾)】

日本の歴史をひも解くに、1つの筋を見出すことができます。
天皇家です。
表へ裏へと歴史を紡ぎ、長い長い帯を仕立ててきました。

ここでは、新たな歴史を前に是非観たい、
山種美術館の特別展「皇室ゆかりの美術」をご紹介します。

ご紹介する展覧会は、
《特別展 皇室ゆかりの美術 -宮殿を彩った日本画-》
2018年11月17日から2019年1月20日まで開催されている、近代日本画の展覧会です。
※今回も内覧会での取材であり、撮影の許可を頂き掲載しています。
※所蔵について記述のない作品は全て山種美術館 蔵です。

テーマである皇室と山種美術館の説明は美術館にお任せするとして、歴史好きの私から皇室を眺めてみるとします。すると・・

「後世に伝わるほどの歴史書は、力がないと編さんできないし、残せないよなぁ」

すなわち、天皇やその周辺には常に歴史を残す力があったということです。それは、武力だけではなく、精神的な力も指します。その素養に集う美術は当然に歴史的逸品です。

「皇室ゆかりの美術」でその素養に触れてみましょう。展示品の一部をご紹介します。

下村観山(しもむらかんざん)
老松白藤(ろうしょうはくとう)」1921(大正10)48歳作

展覧会のリーフレットにもある作品です。大きな金色の屏風で、夕刻の水辺のような感覚を得ます。迫る老松に神仏が映るようです。

右、左、ちょっと下からと様々に眺めてみて下さい。
なお、山種美術館では毎回1品の写真撮影が可能で、今回はこの「老松白藤」が対象となっています。輝きを是非に収めて下さい。



写真右:瀧 和亭(たきかてい)
「五客図(ごかくず)」明治19年 56歳作


荒木寛畝(あらきかんぽ)
「雉竹長春(ちちくちょうしゅん) 」1885(明治18) 54歳作

要教養な作品名に私の脳みそは追いつきませんが、作品の構図や線、色彩には感動を得ます。キジの声が奥行きに溶けていきそうです。低い彩度の背景に鮮やかなキジが咲き、ギャップで澄んだ音が生まれています。空気に消える線がまた印象的です。

竹内栖鳳(たけうちせいほう)「双鶴」

私の大好きな鶴の軸です。本来、和楽器のような悲しい声で鳴くのですが、この作品には楽しい声が響きます。まるでオーケストラのワルツです。先のキジと対比すると、更に面白さを感じるでしょう。
余談ですが、この下の写真は、私が北海道で撮ってきた鶴(タンチョウ)です。


さて、次に行きましょう。

川合玉堂(かわいぎょくどう)「鵜飼(うかい)」
明治28年 22歳作

鵜飼とあるものの、巨大な岸壁が印象的な作品です。龍か?クジラか?と思う自然の姿に、人が翻弄されているように見えます。かがり火は なけなしの抵抗なのかもしれません。
ちなみに、この記事を書いて気付いたのですが、これって22歳の時の作品なんですね。言わば、大学の卒業制作でこのレベルってこと。あぁすんげぇ。

山元春挙(やまもとしゅんきょ)
「火口の水(かこうのみず)」大正14年 54歳作

題名もちゃんと見たほうがいいな。と思わされる作品です。水の引いた池?と思っていたら、実は雄大な火口でした。
学芸員さんによると、山元春挙は写真技術も研究していて、大判(だったかな?)カメラを持ち出して撮っていたんだとか。他の絵画はもちろん、写真も拝見してみたいですね。


さて、作品をいくつか紹介してきましたが、実は最も紹介したい作品が別にあります。私の最愛の芸術家「柴田是真(しばたぜしん)」の「墨林筆哥(ぼくりんひっか)」です。無数にある山種美術館の逸品の中でも、最高のお宝だと思っています。

この作品は漆絵(うるしえ)の画帖(がじょう)で、是真の技術と強烈なセンスが詰まった作品です。ネット上で見る限りは、面白かったり可愛かったり素朴であったりと、心あたたまる作品という印象なのですが、現物にはそれらを「全魅力のごく一部」とする威力があります。単に超絶技巧だとか、そんなレベルではありません。作品を写真でご紹介できないのが大変残念です。是非現物でお確かめ下さい。


以上、作品の紹介でした。
では、山種美術館恒例の展覧会スイーツをご紹介しましょう。

「ちとせ」
下村観山の「老松白藤」を模しています。

「雪輪(ゆきわ)」
上村松園「牡丹雪」がモチーフです。

「初陽(はつひ)」のモチーフは・・・

横山大観「富士山」です。

それぞれ、美術館併設のカフェ「Cafe 椿」にてお楽しみ下さい。

以上。

《特別展 皇室ゆかりの美術 -宮殿を彩った日本画-》
 【会期・開館時間】
・2018年11月17日(土)~2019年1月20日(日)
 会期中、一部展示替えあり
・10:00~17:00(入館は16:30まで)
【休館日】
・月曜日
 但し、12/14(月),1月14日(月)は開館、
 1/25(火),1月15日(火)は休館、
 12月29日(土)~1月2日(水)は年末年始休館
【入館料】
・一般1200円・大高生900円・中学生以下無料

【山種美術館(やまたねびじゅつかん)】
〒150-0012
・東京都渋谷区広尾3-12-36 【map】
・TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
【開館時間】
・10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
※特別展の開館時間は変更になることもあります
【休館日】
・毎週月曜日(祝日は開館、翌日火曜日は休館)
・展示替え期間
・年末年始
【割引券】
ホームページ割引券
【アクセス】
・JR恵比寿駅西口より徒歩10分 【アクセスmap】
・東京メトロ日比谷線恵比寿駅 2番出口より徒歩約10分

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