2013年12月27日

【ArtFM 絵金蔵(高知県香南市赤岡町)】

高知県赤岡町の絵金蔵へ行った。

元は米蔵、路地裏の芝居小屋のような当館、
展示室入口の薄暗さに少々歩みが慎重になる。

展示は、下世話な一流絵師「絵金」の屏風等で、
怪しい闇の中、劇的に眺めることができる。

そのエロさと血生臭さに、
昼ドラを超える迫真の愛憎劇を感じた。

/スグル
 絵金蔵(えきんぐら)の外観です。高知市より少々離れた町の路地裏にあります。レポートの通り元は米蔵で、改装を経て2005年(平成17年)2月にオープンしました。


 絵金蔵はその名の通り、絵師「絵金(えきん)(絵師金蔵(弘瀬金蔵)の略称)」の作品を展示する美術館です。
 絵金は元は土佐藩家老・桐間家の狩野派の御用絵師で、通常ならば10年はかかるとされる修行期間を足かけ3年で修了したとされる天才なのですが、狩野探幽の贋作を描いた嫌疑で城下追放、狩野派からは破門を言い渡されました。その後、移り住んだ場所がここ赤岡です。町内に残された23枚の屏風絵は、当館で収蔵・展示される他、毎年7月に開催される「土佐赤岡絵金祭り」で公開されています。

 館内のカフェです。
 この建屋の所有は赤岡町なのですが、運営はNPO「絵金蔵運営委員会」が担っています。美術館の運営の目的は、絵金の本画の保存と、高齢化に悩む地域の活性化です。設立には有名デザイナーの梅原真(うめばらまこと)さんや若竹まちづくり研究所が関わっており、町の魅力の再発見作業には私の大好きな藤森照信さん(建築家)や赤瀬川源平さん(芸術家)が関わっています。(赤岡まちづくりの記録へのリンク)
 余談ですが、以下は藤森照信さんが手がけられた美術館の1つです。すごく魅力的な建物ですので、どうぞご覧下さい。

 左の闇が展示室の入口です。奥からは寒々しい音も聞こえてきます。入口が怪しい美術館に初めて出会いました。

 手さげの提灯です。これを持って展示室に入ります。半ば肝試し状態で、ワクワクというよりドキドキしました。

 絵金「伊賀越道中双六 岡崎(いがごえどうちゅうすごろく おかざき)」です(※当画像はネットより拝借)。
 今回の訪問で拝見した本画2枚のうちの1枚です。「蔵の穴」という怪しい覗き窓を通じて拝見しました。壁に据えられた穴を通じて蔵の中に展示された本画を覗き見るというもので、覗き部屋や雑誌の袋とじの様なドキドキ感(下心??)と共に屏風を楽しむことができます。

 こちらも本画で拝見した、絵金「花上野誉石碑 志度寺(はなのうえのほまれのいしぶみ しどじ)」です(※当画像はネットより拝借)。
 絵金が赤岡町に残した23枚の芝居絵屏風は7月のお祭りの際に過酷な環境下に置かれる為、せめてその他の期間は厳重に保管する必要があります。それでも来館者に本画をご覧いただこうと考えだされたのが、やらしい覗き穴「蔵の穴」です。心なしか臨場感も増します。この男心をくすぐる「蔵の穴」では、毎月2点が公開されています。

 絵金「仮名手本忠臣蔵 七段 一力茶屋の場」です。場の臨場感と共に、右奥に見える場面も気になります。この微妙なエロさがたまりません(※当画像はネットより拝借)。
 このように、一つの画面に複数の場面が描く方法を、異時同図法(いじどうずほう)といいます。

 絵金「蝶花形名歌島台 小坂部館(ちょうはながためいかのしまだい こさかべやかた)」です(※当画像はネットより拝借)。
 戦国時代の土佐の武将、長宗我部元親が描かれています(江戸時代の土佐を治めたは山内一豊です)。右奥に描かれている小坂部館の主、小坂部音近が「長宗我部元親」です。当作品では、長宗我部元親の家督相続と豊臣・徳川の内紛事件を題材に脚色して描いています。

 ちょっと話しがズレますが、高知の桂浜の近くに立つ「長宗我部元親初陣の像」です。私の大好きな銅像作家、濱田浩造が作りました。車がなければ不便な場所に立っているのですが、前々から是非に見たいと思っていたので、辿り着いた時は相当に嬉しかったです。多くの写真を撮ったので後日レポートします。
 話しを戻しますと、土佐では長宗我部元親の人気は高く、絵金の作品にも多く出てきます。この銅像ではカッコいいお姿をしていますが、絵金の作品内では迫力あるおっさんです。最近は「戦国BASARA」などの影響で若い女性にも人気があります。そう、アニキ!です。

 絵金の小襖「夜這図」です(※当画像はネットより拝借)。
 公共の福祉の関係上、ArtFMでのエロ系のネタは抑えすぎず書きすぎずにしていますが、絵金の作品にはエロな描写や男性のイチモツがあちらこちらにあります。

 絵金の一流の絵師っぷりをご覧頂きましょう。絵金「鴉」です(※当画像はネットより拝借)。
 いかがでしょうか、この構図、この勢い、この気迫。質感や景色、鴉の性格まで伝わってきます。粗くとも特徴が叩きこまれている感じです。ストーリーさえ浮かびませんか?

 絵金「猿」です(※当画像はネットより拝借)。
 牧谿(もっけい)のお猿さんがモチーフのような気がしますが、その描き方は独特です。幹・枝・葉の描き方に勢いがある他(なのに主題よりも控え目に見えます)、お猿さんに動きと心を感じます。木の葉を投げつけるイタズラお猿さんのようです。

 白描(はくびょう:芝居絵などの下書き)の役者絵、絵金「箱根霊験躄仇討 滝口上野と飯沼勝五郎」です(※当画像はネットより拝借)。

 再び館の外です。大空に大きな旗がなびいていました。(注:絵金の作ではありません)

 館の外のお手洗い。「かわや」の表記がなんだかいい感じです。

 こちらは、絵金蔵の目の前に建つ芝居小屋「弁天座」です。土佐絵金歌舞伎をはじめ、各種のイベントが開催されています。時間の関係で中に入ることはしませんでしたが、Webサイトによると結構しっかりとした劇場のようです。

 入口の上部(写真右上)には絵金の作品が飾られています。

 赤岡町の町中です。高知駅から電車で30分以上の場所なので賑やかというわけはありません。ですがその分、味があります。こちらは初代村長・小松与右衛門邸です。

 赤岡の商店街(?)です。こちらは雑貨屋さん・・ですかね。この味、いいでしょ?


 赤岡の路地裏です。シミやらコケやら、やっぱり味があります。訪問の際はいろいろと歩き回って下さい。

 さて、交通手段です。行きは高知龍馬空港からタクシーに乗り、帰りは電車に乗りました。最寄りの駅は、土佐くろしお鉄道 ごめん・なはり線の「あかおか駅」です。手段の詳細はレポートの文末のアクセス欄をご覧下さい。

 ごめん・なはり線の電車は「やなせたかし」さん色です。高知はやなせたかしさんの故郷(生まれ故郷ではありません)なので、いろいろな場所でキャラクターを拝見することができます。

 画面右寄りのキャラクターが「あかおか えきんさん」。下世話な絵金がかわいいキャラクターになっていました。

 車内もこの通り、やなせたかしさん色です。

【絵金蔵】
〒781-5310
・高知県香南市赤岡町538 【map】
・TEL:0887-57-7117
【開館時間】
・9:00~17:00(入館は16:30まで)
【休館日】
・毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌火曜日)
・12月29日~1月3日
【観覧料】
・500円
【アクセス】
・高知龍馬空港から約10分(タクシー代の目安は約1200円)
※私は往路でタクシーを利用したのですが、所要時間は15~20分程で、運賃は1510円でした。googleマップでは車12分と表示されます。
・土佐くろしお鉄道 ごめん・なはり線「あかおか駅」下車 徒歩約10分
※googleマップで確認したところ、徒歩6分と出ました。帰路に電車を使った私の感覚としてはもうちょっとかかったような気もするので、美術館の案内の通り徒歩約10分としておきます。

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