極彩色の代名詞、
日光東照宮近くの当館、
外観の落ち着きがオスメスの柄違いに思える。
館内は静かに豪華で、
モダンな印象もある中村岳陵や荒井寛方の襖絵などが並ぶ。
特に雲上の楽園、
横山大観の金雲が包む貴賓室には、
無限で夢幻な空間を感じた。
/スグル
この極彩色、日光東照宮美術館のものではありません。日光東照宮のものです。境内に入ってビックリ。彩度激高な色と眩い光が飛び込んできます。派手とは聞いていましたが、これほどに豪華絢爛だとは思ってもいませんでした。
どこをどう撮っても豪華です。
訪問したのは2月初旬。まだ雪が残っていました。
さて、奥の院の坂下門です。有名な「眠猫」がいます。確かに寝ているようでもあるのですが、私には、獲物を狙っているように見えました。上の写真のとおりです。青い蝶か何かを影に隠れて狙っているように見えませんか?
奥宮です。比較的落ち着いています。ただ、表立って派手ではないものの、裏地は高価って感じに思えるんですよね。金色が刺繍に見えてきます。
この重要文化財である奥宮の「鋳抜門(いぬきもん)」、作者は椎名伊豫(しいないよ)です。命を感じる上に圧力まで放っています。この造形美がたまりません。これほどまでに素晴らしい作品を生み出した方なのに、ネットで調べると情報が少ないのが不思議です。鋳物師であり、椎名伊予良寛(しいないよよしひろ)といい、他の作品として、東京都台東区の長明寺の銅鐘や、新宿区の西迎寺の阿弥陀如来坐像があるというのは分かったのですが、年表などが見つかりません。どんな方か分かったら、また追記することにします。
奥宮への階段です。段数は約200段(207段だそうです)。カメラの機材を抱えて登るのは当然に少々苦しいのですが、奈良県の室生寺の約700段や、山形県鶴岡市の出羽羽黒山の2446段に比べれば楽だと言い聞かせて一気に登りました。結果、ひそかにゼェゼェハァハァ。余裕を持って登りましょう。
さて、ようやく日光東照宮美術館です。こちらの道を通って美術館に向かいます。
日光東照宮美術館の門です。日光東照宮の境内に比べ、かなり落ち着いています。
日光東照宮美術館です。オス・メスの柄違いとレポートに書きましたが、お感じ頂けますでしょうか。十分に豪華ではあるのですが、日光東照宮のような極彩色はありません。
この日光東照宮美術館、元から美術館として造られたものではありません。日光東照宮旧社務所・朝陽閣です。パンフレットによると、衣冠束帯(いかんそくたい)の神職が自由に行動できるよう、造りを大きくするために、日本の建築工法である「曲尺(かねじゃく)」設計ではなく、珍しい「メートル法」を用いた建築物なのだそうです。細かくはよくわかりませんが、規格外である以上、余計に費用がかかったであろう事は想像つきます。
大広間です。ちょっと前まで日光東照宮の極彩色に触れていたため、この外の景色だけでホッとします。
館内です。
貴賓室をつつむ横山大観の「朝陽之図」です(※当画像はネットより拝借)。
画像上4面ですが全8面あります。明確な地がなく、奥行きをもって朝陽と雲が描かれているため、雲の上に立つ感じがしてきます。格の高さと広い空間を演出する、せり上がった格天井がまた格別です。ここにいると、それだけでおもてなしを感じる上、なんだか徳が高くなったような気がしてくるんですよね。当然、気のせいなのですが。
中村岳陵(なかむらがくりょう)「瑞兆」です(※当画像はネットより拝借)。
瑞鳥(ずいちょう)とはなんぞや?とパンフレットを開くと、「Hawk」との訳がありました。なるほど、タカなのですね。
和の作品には、読み方が分からない、意味がわからないというものがよくあります。作者名や歌や句なども同じです。そんな際に私が見るのは英語訳です。英語が得意という訳じゃない私でも、日本語を必死に読み解くより英語訳のほうが実にわかりやすいと思います。
ただ、ここには落とし穴が。
この「Hawk」と訳されていた「瑞鳥」、日本語の辞書には、「めでたいことの起こる前兆とされる鳥。鶴・鳳凰など。」と書かれています。すなわちHawkでは、描かれている鳥の種を示しただけ、もしくは瑞鳥の一例を示しただけで、本当の意味は述べていないのです。文化的背景のない方々に対しては、意味よりも何が描かれているのかの方が優先順位が高いのでしょうね。
日本語の単語には、音だけではない深い意味や歴史を内包しているものが多く、単純に音や意味をつかもうとする事は日本人としてイカンのかもしれません。が、音読み・訓読み・当て字、そして意味不明と、日本語をしっかり理解するのは大変難しいとも思います。しばらくは英語訳も活用しますが、せっかく日本人に生まれたのだから、しっかり理解していきたいですね。
極力英語訳に頼らず、脳内検索で賄えるよう頑張っていこうと思います。
中村岳陵・荒井寛方(あらいかんぽう)・堅山南風(かたやまなんぷう)合作「檜・杉・桜」です。ん?どこかで写したことがあるような風景だなぁと思ったら・・・
こんな写真を撮っていました。訪問以前に自宅近くで撮った写真です。屏風や掛軸など和ものが好きな私は、こういった風景が目に入ると心が自然に反応します。中村岳陵が施す抽象的な和モダンへの心の反応も、こういった理由からなのでしょう。卵が先か鶏が先かに近い話ではありますが。
今回のレポートでは、特に横山大観と中村岳陵について触れましたが、荒井寛方と堅山南風の襖絵も、ものの見事なものです。日光東照宮のド派手さの楽しみ方とは違い、伝統的な和の芸術とモダンな感覚の融合を、心を休めて味わって戴ければと思います。
日光東照宮美術館のお手洗いにて。
「温感ジョワ~ン」。実況しないで下さい。
電車です。JR宇都宮駅より日光線に乗り、JR日光駅に向かいました。バスについては、JR日光駅前から乗ることもできますが、徒歩数分の東武日光駅に移動した方が周辺にお店があったりして楽しいので、徒歩移動をオススメします。
東武日光駅前にて頂きました。「揚げゆばまんじゅう(200円)」です。小腹がすいたので買ったのですが、予定外に美味しくて追加購入してしまいました。オススメです。
〒321-1431
・栃木県日光市山内2301 日光東照宮内 【map】
・0288-54-0560
【開館時間】
・8:00~17:00(4月1日~10月31日)
・8:00~16:00(11月1日~3月31日)
※受付終了は閉館30分前
【休館日】
・年中無休【入館料】
・800円(大人)
【アクセス】
※東武日光駅・JR日光駅よりバス
(普通車1日500円の東照宮大駐車場はありますが、200台駐車可能と制限があり、またかなり混むとの話しを聞いていますので、バスをおすすめします。)
(東武日光駅前には大きなバス乗り場があり、行き先様々なバスが停まります。行き先「世界遺産めぐり(表参道まで)」に乗り、表参道(280円)で降りたように思いますが、少々記憶が怪しいので、現地の観光案内所などでご確認下さい。)
※日光観光協会バス情報
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